モノづくりチャレンジャー心得

企画づくりでの大事なことを、10個の「チャレンジャー心得」としてまとめてみました。


その1:企画づくりのゴールは「ハマる、トキメく、作る・売る」

お客さん・あなた自身・自社の三つの目線で「これはイケる!」という企画アイデアを目指そう。

「どんなモノを作ったらよいか」という企画アイデアの答えは無数にありますが、どんなアイデアでもよいわけではありません。作り手は絶えず次の3つの目標を意識して切り替えながら、その企画アイデアがイケるかどうかを見極めましょう。これらの目標に照らしてみて「これはイケる!」「きっとこれだろう!」とあなた自身が確信できるアイデアに出会うことが、企画づくりのゴールです。

目標①:自分がハマれる

これをやってみよう!とあなた自身が情熱を持てること。

目標②:ターゲット客がトキメく

ターゲット客を一目で「何これ!スゴい!」「ステキ!」「欲しい!」と感じさせて恋に落とすこと。

目標③:自社が作れる・売れる

自社の事業として、製造・販売していけること。


その2:企画はモノ・コト・オモイで考える

作り手はついモノだけを見ては何か新しい機能・性能を上乗せしたり、部分部分を改良したりすることに没頭してしまいがちです。しかし大事なのは「このモノを誰がいつ、どう使うことで、どんな良いことがあるのか」という「コト」も一緒に考えながら、それを実現するためのモノを考えていくというように、コトを優先しながらモノも同時に考えていくことです。

このコトとモノのアイデアを考えブラッシュアップしていく中で、あなた自身に「きっとこれが大事だ!」、「自分たちがやるべきことはこれだ!」というこだわり・信念のような「オモイ」が生まれてくるはずです。この「オモイ」を作り手自身が見つけることもとても重要なことです。これは言わば新製品開発の目的とか開発製品の存在意義といったものにも当たるとても大事な要素です。

これらの「コト・モノ・オモイ」の関係は、上の図のように整理できるでしょう。
お客さんから見えるのは「伝え方・売り方」と「モノ」の部分だけですが、客からは直接見えない「コト」「オモイ」が、氷山の水中にある部分のようにモノを支えています。お客さんはモノの裏側にある「コト」や「オモイ」に共感してはじめて、その「モノ」にトキメき買いたいと思ってくれるのです。逆に言えば、この「コト」や「オモイ」がない、あるいはあるとしてもお客さんから見て共感できない場合、「モノ」にお客さんがトキメき、選択・購入に至ることはあり得ません。


その3:段階的なゴールを描く

新製品開発は段階的に大きなゴールを目指そう!

いきなり「売れるモノをつくるぞ!」と張り切りすぎると、せっかく筋の良さそうなアイデアが見つかっても「これは製造コストが掛かりすぎる」とか「これはウチでは作れない・売れない」とか「これってホントに売れるのかな?」といった、できない理由や心配ばかりが先に立ってしまい、なかなか先へ進めなくなります。

最初は「まずは一つプロトタイプを作ってみる」くらいを目標としましょう。それを自分たちで試してみても「これはアリだ!」という自信が持てたり、お客さんからの評判が良かったりしたなら、次には「小規模にテスト販売してみる」くらいの目標を目指します。そこで「これは事業としてイケそうだ!」という確信が得られたなら、量産やブランディングなどにも投資をして「長期的優位を作れる事業を構築する」という大きな目標を狙っていく、というように段階的に大きなゴールを目指していくのが良いでしょう。

ところで「長期的優位」というとちょっとイメージが着きにくいですね。これは「作ったモノが売れました」というだけではなく、もっと事業として頼もしい状態、例えば「注文伝票が次々来て、悩まずに作って納品できる」とか「予約が常に入り、作る端から売れていく」というような状態が続くことかと思います。こんな状態を目指したいですね。


その4:遊ぶように妄想する

とある企画会議の風景。遊んでいるように見られるかも?(一部合成です)
とある企画会議の風景。遊んでいるように見られるかも?(一部合成です)

新しいモノを考える仕事は、受注型のものづくりの仕事とはかなり趣が違うものになります。ネットでいろいろなユーザーやモノについて調べたり、「お客さんは本当はこうしたいんじゃないか?」とか「では、こんなモノはどうだろう?」というように妄想をたくましくしてワイワイとアイデアを出し合ったり、ダンボールや紙など手近な材料でササッと試作して自分たちでまず試してみたりといった仕事は、端から見ると一見遊んでいるように見えるかもしれません。しかし、難しい顔をしてマジメに会議をするようなやり方では、本質を突いたユニークなアイデアは絶対に作れません。

ただ、こうした仕事を社内のメンバーだけで突然始めようとしてもなかなか難しいと思いますので、社外のデザイナーやウチのような支援機関も交えて、定期的にミーティングをするところから始めてみるのもいいと思います。


その5:アイデアをたくさん、常に考え続ける

ねらいはいいのに、モノとしてはちょっと…ということがよくあります。これを防ぐためには「もっと良さそうな、こんな方法もあるのでは?」というように、ある目的(コト)を果たすためのモノ・解決策のアイデアを「もうこれ以上出ない!」というくらいまで、早い段階で出しつくしておくことです。また、現状のアイデアに対しても「これよりこの方がいいんじゃない?」というように、現状でゴールとせず常により良いモノ・方法へと更新し続けることも大切です。

一旦決めたモノのアイデアに明らかにおかしな部分があったり、もっと良いモノにしていける余地があったりすることに薄々気づいていながら「もう決めたことだから」とか「今さら戻ってる時間ないから」と、気づかなかったことにして先へ先へと進んでしまうのは、新製品開発に限った話ではありませんが、ゆくゆくとんでもない大惨事を招きかねません。下のようなことにならないよう、くれぐれもご注意ください。

  • 「開発スケジュール通りに進めなきゃ!」とか「上司の承認もらわなきゃ…」というプレッシャーで「誰かが欲しがるモノを作る」という当たり前の目標を忘れてしまう。
  • そもそもが上司やエラい先生から下りてきたアイデアに忖度せざるを得ず、ダメでも大きく見直せない。
  • ダメなアイデアのまま焦って知財化や補助金申請をしてしまい、アイデアを大きく見直せない。

その6:自社公認の業務にする

開発したものが売れるかどうかはアイデアの良し悪しによりますが、それ以前に、新製品開発という活動そのものがちゃんと進められるかどうかは、社内の体制や考え方によるように思います。誰かが頑張って筋の良いアイデアを考えても、それを少し試作するにも自社の設備を使うために面倒な根回しが必要だったり、上層部から決まり文句のように「それはいつ商品になるんだ?どれだけ売れるんだ?」とか「そんなモノ作ったってどうせ売れないだろう」と言われたりするようでは、考えた人もその先へ情熱を持って進めていこうという気持ちにはなれないでしょう。

新製品開発でやるべき仕事は、慣れ親しんだ受注型のものづくりの仕事とは目的も中身もかなり異なります。開発チームからすれば、そうしたことを経営者をはじめとした上層部がある程度理解した上で「お前に任せた、まあ好きにやってみろ」というお言葉をもらえるのが理想ではあります。とはいえ、実際にはそういった恵まれた状況にいる方も少数派だと思います。上層部も少しずつ巻き込んでいき、楽しみつつ見守ってもらえるような雰囲気を作っていくとか、お客さんからの「それは是非商品化して欲しい」といったエールを味方につけるなどいろいろ方法はありそうですが、これだ!とは一概に言えないと思います。良い作戦を一緒に考えましょう。


その7:キラーバリューを考える

キラーバリューは情緒と機能の二方向で考えよう

売るための商品をつくるなら、それをひと目見た誰かを出会い頭に「スゴい!」「こんなの欲しかった!」「何これ?ちょっと買ってみよっかな」と恋に落とせるようなモノを目指さなければなりません。この、お客さんをひと目で悩ましい思いにさせるような、そのモノ特有の価値・魅力を「キラーバリュー」と呼ぶことにしましょう。

キラーバリューには、お客さんの感性をくすぐり「素敵!」「かわいい!」「癒やされる〜」と感じさせる「情緒ベネフィット」と、お客さんにとっての便利さや効率アップ、問題解決などを実現する「機能ベネフィット」の二つの方向があります。

情緒ベネフィットで勝負するなら、どこかのタイミングで試作やスケッチなどを用いてお客さんの反応を確かめておければ、その先へ安心して進めていけるでしょう。また、機能ベネフィットで勝負するなら、便利さや効率アップを具体的なデータなどで証明できれば、お客さんやバイヤーの食いつきに俄然効果を発揮するでしょう。

ところで、サラッと言いましたが「ひと目で」というのも重要なポイントです。開発品についてうんと説明しなければお客さんの共感を得られないようなモノでは、事業化しても苦労の割りになかなか売れない、ということになりかねません。


その8:ササッと見える化・さわれる化する

最初はこんな図画工作レベルでも十分

作り手はつい最初の試作から高い材料や貴重な人手、立派な加工設備を使ってちゃんと動作する立派な試作機を作ろうと考えがちです。しかし、その後のユーザーテストで根本的な誤りが見つかってしまい、今さら引くに引けず見なかったことにしてさらに先へ進めて、結果として莫大な投資を無駄にしてしまったという話もよく聞きます。

フェイルファスト(fail fast)という考え方があります。そんな根本から誤ってしまうような失敗は、おカネも時間も掛けずに早めにしっかり確認しとこうよ、という考え方です。
新製品開発の初期段階で「こんなモノ考えてみたけど、どうなんだろ?この方向でいいのかな?」というレベルの、仮説の根本的な正しさを確認するためには、モノのアイデアを紙やダンボールなどでササッと形にしてみて、使用現場をイメージしながら使うマネをしてみるというだけでも十分役に立ちます。また、手を動かしていろいろ工作を楽しんでいるうちに、思ってもみないアイデアに出会えることも多々あります。こうした工作をするための材料や道具、スペースをいつでも使えるように確保しておけると、思い立った時にいつでもアイデアを形にできるので、企画づくりにはとても役立ちます。


その9:作り手自身の認識・センスを上げる

何か新しいアイデアに接した時に、それを「面白い!可能性ありそう!その方向でやってみよう!」とノリノリで受け入れられるか、あるいは「いまいちピンとこないんだけど…」とシラケ気分でスルーしてしまうかは、アイデアそのものの出来よりは、受け取る側の認識とかセンスによる方が大きいように思います。言いかえれば、作り手自身の認識・センスが上がらなければ、良いアイデアを作れないのはもちろん、良いアイデアに出会えたとしてもその良さに気づけず取り逃がしてしまいます。でも「オレにはセンスがないから、新製品開発は無理かも…」と早々にあきらめてはいけません。

新製品開発では、お客さんは今何に困っているだろう?、他社ではどんな先行製品を出しているだろう?、お客さんはどうできるのが理想だろう?、この素材・技術をどう生かせばいいだろう?といった疑問を自分自身で見つけ、それを解いていくことを繰り返します。また、自分オリジナルの仮説を試作し検証することで、世の中になかった全く新しい有用な知識を創造することすらあります。こうした活動を通じて、作り手自身の認識・センスはスタート時点とは比べものにならないくらい上がっていくはずです。

そして、認識・センス上がることで、作り手には「どうもこれが大事なことなんじゃないか?」とか「ウチがやるからには、ここにはこだわらなきゃダメだ!」、「こんなコト・モノが求められているはずだ!」、「こういう楽しさ・便利さを世の中に発信したい!」といったこだわり・信念が見えてくるはずです。これがこのガイドで「オモイ」と呼んでいる、新製品開発でとても大事な要素です。

ということで、まずはぼんやりテーマを仮でもいいのでササッと決めてしまい、それに対して何か疑問を見つけて調べてみたり、コトとモノのアイデアを作ったり、ササッとそれを見える化・さわれる化してみたりということを始めてみましょう。始めてしまえば、いろいろな知識や新たな気づきが得られて、あなた自身の認識・センスが上がり、さらによいコト・モノのアイデアが作れるようになる、といったよい循環に入っていけるでしょう。


その10:リーダーは開発品の親となれ

「作るのはウチは得意だから、良いアイデアや良いデザインさえあれば売れるモノは作れる(だからデザインだけ、アイデアだけくれ!)」という話を何度かされたことがありますが、そうしたケースでうまくいったことはありません。デザインやアイデアを作るために社外デザイナーなどの力を借りたとしても、それを自分ゴトとして受け止めて、商品にまとめて、作って売っていくのは開発リーダーでありその人が所属する企業などです。特に、開発リーダーとして開発品の親となり、そのアイデアを創造するところから、試作・テストを繰り返して商品にまとめ、製造・販売体制を作って事業にする、売れなくなってきたらテコ入れするといった、最初から最後までしっかり見守り育てていく人の存在が不可欠です。この親がいない、あるいはその覚悟がない人がリーダーであった場合、新製品開発はどうやったって上手くいかないでしょう。

あなたが開発リーダーなら、よろこんで親を引き受けられるようなテーマ・モノがいいと思うでしょう。その意味で、企画づくりでは「売れるか、作れるか」を考えることももちろん大事ですが、何よりも「あなた自身がハマれるか、やりたいと思えるか」を突き詰めることが大事だと思うのです。